Diversity Studies

必ず私が支える

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(33)〜

  必ず私が支える   「破壊」は注目を集めた。 「ヴィオレット・ルデュック、男並みに性を語る」 「女性が使ったことのない過激な表現をあえて使っている」 「彼女は何ものも恐れず哀れまない」 しかしボーヴォワールは満足しない。まだ先を見ています。 「ヴィオレ...

これは私の義務よ

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(32)〜

  これは私の義務よ   ヴィオレットの見舞いに来たジャック・ゲランと 階段の上と下で会ったボーヴォワール。怒っています。 「私の反対を無視して電気ショックをかけた。医師に話があるの」 「私も行こう。治療費は負担させてもらう」 「やめて」 「君の彼女への友...
女優・黒川鮎美が結婚の平等をテーマにした映画で初監督

女優・黒川鮎美が結婚の平等をテーマにした映画で初監督

女優の黒川鮎美氏が結婚の平等の実現をテーマにした映画『手のひらのパズル』を制作するために、クリエイティブチーム「BAMIRI。」を立ち上げ、映画制作のためのクラウドファンディングを開始しました。   地方都市の性的マイノリティを描く テレビや映画などで活躍中の女優・黒川鮎美氏が、映画制作のためのクリ...

私は切り刻まれる

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(31)〜

  私は切り刻まれる   ボーヴォワールは数社をあたり、 大幅に削除しない限りどの出版社も出さないとわかった。 「どうしたらいい?」心細げにヴィオレットが訊く。 「譲歩するの。気持ちはわかるわ。いつか取り戻すのよ。私を見て。 あなたは初めて女の性を語った、詩と真...

シモーヌ、冷静になりたまえ

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(30)〜

  シモーヌ、冷静になりたまえ   「彼女は偉大な作家よ。不当だわ。ジュネには寛大だったのに」 ボーヴォワールがガリマール出版の編集者に異議を唱える。 「シモーヌ、冷静になりたまえ。 ヴィオレットがもう少しエロティシズムを和らげ、情緒の箇所は守る、 何れにしても...

毎月送金があるわ

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(29)〜

  毎月送金があるわ   「ガリマール(出版)に話したわ。毎月送金があるわ。 執筆に専念するためのお金よ。 新作に取り組むことが条件よ。優秀な編集者の役割は 才能があるのに売れない作家を発掘し、売ること」 「売れないわ」あくまで拗ねる。 でもヴィオレットに...

もう一人の性体験の話は?

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(28)〜

  もう一人の性体験の話は?   書くことがないというヴィオレットにボーヴォワールが 「寄宿生時代のもう一人の性体験の話は?」 ヴィオレットが何気に話した中身を、ボーヴォワールはよく覚えています。 単に頭がいいからでしょうか、いやあ、ボーヴォワールだって ヴィオ...

私よ、心配したわ

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(27)〜

  私よ、心配したわ   雪の日、シモーヌがヴィオレットを訪ねた。 「だれ?」と重苦しい声。 「私よ、電報に返事もくれないから心配したわ。入れてくれる?」 「掃除、していないから」 「私だってしていないわ」 入室。室内を珍しそうに見回し「ここで執筆を?」 ...

大げさなんだよ!

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(26)〜

  大げさなんだよ!   劇場から出て行くヴィオレットの様子を見たジャン。 「どうしたんだ?」 「どうならいい? 劇場でも歓迎されない、本は売れない」 怒り嘆くヴィオレットに「大げさなんだよ!」と一喝。 生後7ヶ月で母親に捨てられ、15歳で感化院、18歳で外人部...

私に愛を期待しないで

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(25)〜

  私に愛を期待しないで   3ヶ月たつのにボーヴォワールは帰国しない。 ジャン・ジュネの舞台稽古を見に行くと、 誰もいない暗い客席にいるのは彼女だ。 (帰っていたのに)忿懣やる方なく近づき 「“飢えた女”が嫌いならそう言って」 振り返ったボーヴォワール。...