私は切り刻まれる
ボーヴォワールは数社をあたり、
大幅に削除しない限りどの出版社も出さないとわかった。
「どうしたらいい?」心細げにヴィオレットが訊く。
「譲歩するの。気持ちはわかるわ。いつか取り戻すのよ。私を見て。
あなたは初めて女の性を語った、詩と真実と多くのもので。
いつか感謝されるわ」
熱っぽく説得するボーヴォワール。
ヴィオレットはつぶやく。
「恐ろしい。私は切り刻まれる」
不安と恐怖が膨れ上がる。ヴィオレットに
ボーヴォワールの大人としての粘り強さはまだありません。
追いつめられた神経は錯乱を招き、精神病院に入院します。
〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」〜