私が変?バカにしないで!
ヴィオレットは書店にいる。
処女作「窒息」の発売日だから見に来たのだ。
いくら探してもない。
「窒息」が見当たらないけど、と女性店員に訊く。
「無名作家だと出版社は部数を抑えるのです。注文しますか?」
彼女は親切に尋ねてくれているのにヴィオレットは怒る。
「はっきり言ったらどう? 価値のない作家だと。
この店は売れっ子の作家しか置かないのね」
手元の本を宙に放り投げた。
「落ち着いて。変ですよ」
「私が変? バカにしないで」
逆上したまま出て行く。
これじゃ本人がしんどいだろうと思えるほどの激情型です。
〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」〜