エマニュエル・ドゥボス

生活費の援助をやめた

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(38)〜

  生活費の援助をやめた   著者サイン会。行列ができヴィオレットが自著にサインしています。 ラストの字幕にこう出ます。 「私生児」は「ベストセラーとなりボーヴォワールは 生活費の援助をやめた」 ヴィオレットは1972年、南仏フォコンで死去。61歳。 「私...

文学による美しい救済

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(37)〜

  文学による美しい救済   ボーヴォワールのインタビューが続きます。 「ある日、彼女は南仏へ。 山の生活は彼女の官能と好奇心に感性が伴うものでした。 静けさの中で正しく自分を見つめ 世に受け入れられる作品を書いたのです。 詩と真実と多くのものを織りなして...

著者について話してください

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(36)〜

  著者について話してください   ヴィオレット畢生の大作「私生児」はベストセラーとなった。 ボーヴォワールがラジオ局で インタビューに答えている。 ボーヴォワールさん、著者について話してください」 「作家には語るべきものがあり、それぞれ独自のものです。 ...

構想は出来ている

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(35)〜

  構想は出来ている   母親の葬儀をすませたばかりのボーヴォワールは気落ちしていた。 「泣いている、この私が。後悔ばかりよ。私は母を怖がらせた。 いつか私も死ぬのね。わかっているけど腹がたつ」 気をとりなおし 「今から読むわ。序文を書くわ。構想は出来ている。 ...

もう一度書くのよ!

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(34)〜

  もう一度書くのよ!   ガリマール出版社から月々振り込まれる手当は ボーヴォワール個人のお金だとわかった。 「あなたでしょ! 帰るわ!」 プイと飛び出したヴィオレットをボーヴォワールが追いかけた。 セーヌ河岸を並んで歩く。 「嫉妬、焦燥、不幸、全部あな...

必ず私が支える

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(33)〜

  必ず私が支える   「破壊」は注目を集めた。 「ヴィオレット・ルデュック、男並みに性を語る」 「女性が使ったことのない過激な表現をあえて使っている」 「彼女は何ものも恐れず哀れまない」 しかしボーヴォワールは満足しない。まだ先を見ています。 「ヴィオレ...

これは私の義務よ

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(32)〜

  これは私の義務よ   ヴィオレットの見舞いに来たジャック・ゲランと 階段の上と下で会ったボーヴォワール。怒っています。 「私の反対を無視して電気ショックをかけた。医師に話があるの」 「私も行こう。治療費は負担させてもらう」 「やめて」 「君の彼女への友...

私は切り刻まれる

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(31)〜

  私は切り刻まれる   ボーヴォワールは数社をあたり、 大幅に削除しない限りどの出版社も出さないとわかった。 「どうしたらいい?」心細げにヴィオレットが訊く。 「譲歩するの。気持ちはわかるわ。いつか取り戻すのよ。私を見て。 あなたは初めて女の性を語った、詩と真...

シモーヌ、冷静になりたまえ

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(30)〜

  シモーヌ、冷静になりたまえ   「彼女は偉大な作家よ。不当だわ。ジュネには寛大だったのに」 ボーヴォワールがガリマール出版の編集者に異議を唱える。 「シモーヌ、冷静になりたまえ。 ヴィオレットがもう少しエロティシズムを和らげ、情緒の箇所は守る、 何れにしても...

毎月送金があるわ

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」(29)〜

  毎月送金があるわ   「ガリマール(出版)に話したわ。毎月送金があるわ。 執筆に専念するためのお金よ。 新作に取り組むことが条件よ。優秀な編集者の役割は 才能があるのに売れない作家を発掘し、売ること」 「売れないわ」あくまで拗ねる。 でもヴィオレットに...