お前の本だけど

 

お前の本だけど

 

ヴィオレットの母ベルトが「窒息」を読んだ感想を言う。

「ウソで固めて私を怪物に仕立てた。“壁の上の女”って彼女?」

「そうよ、知っているくせに」

娘の部屋の机や壁にはボーヴォワールの写真がある。

このお母さん、とても面白い人で、

娘を愛しているのだけど、のめり込まないのね。

ヴィオレットが、女性が好きなのは寄宿生時代から知っている。

いやもっと前から母親ならわかっていただろう。

今度はあの写真の女か。

(しゃあないな)好きにして。とらわれていません。

 

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」〜

 

 

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