構想は出来ている
母親の葬儀をすませたばかりのボーヴォワールは気落ちしていた。
「泣いている、この私が。後悔ばかりよ。私は母を怖がらせた。
いつか私も死ぬのね。わかっているけど腹がたつ」
気をとりなおし
「今から読むわ。序文を書くわ。構想は出来ている。
今度こそチャンスを活かすわ」
ボーヴォワールにはヴィオレットが書き上げる確信があった。
その日のために序文まで構想している。
「ここにいていい?」心配そうにヴィオレットが訊く。
ソファで眠るヴィオレットのそばでボーヴォワールが読む。
1000枚。夜が白んできた。
フランス文学史の新しい1ページを開く夜明けでもありました。
〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」〜