「窒 息」

 

「窒 息」

 

ヴィオレットの処女作「窒息」の印刷があがった。

インクの匂いのしそうな本を持ってヴィオレットは元カノに

会いに行く。

「渡すものがあるの」

「窒息?」

「来週本屋に出るわ」

「すごい、ガリマール書店からじゃない」

「読んでくれるわね。そしてまた会わない? 昔のように。

ずいぶん久しぶりよ」

ヴィオレットは彼女の両手を握りしめ、「相手は? 元気?」

無理やりキスするが、彼女は振り払って走り去る。

元カレ、モーリスもヴィオレットから去る時は

こっそり、そしてヴィオレットに見つかったと見るや

韋駄天のように走り去りました。

ヴィオレットの濃いというか、濃すぎる愛情は

相手を辟易させるものがあるようです。

ボーヴォワールはどうだったでしょう?

 

 

〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」〜

 

 

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