ウェンディ・マッケナ

若き詩人への手紙

〜「天使にラブ・ソングを2」㉑〜

  若き詩人への手紙   「歌が好きでしょ。私は歌うと最高に幸せよ」 ドロレスがリタに話しかける。 「そんな顔、しないで。これは母がくれた本よ。若き詩人への手紙。 リルケよ。すごい作家よ。 ある作家志望の男が彼に作品を送ったの。 リルケの返事は、作家になれるかなどと訊くな。 ...

夢は追わない主義なの

〜「天使にラブ・ソングを2」⑳〜

  夢は追わない主義なの   リタはただ一人、頑なに仲間に入ろうとしません。 メアリーは「歌が好きなら聖歌隊に入って」と声をかけます。 プイと「夢は追わない主義なの」 「私も昔はそうだったわ。シスター・クラレンスが力になってくれるわ。 あなたはまだ17歳。可能性を決めつけるのは...

メリーさんの羊

〜「天使にラブ・ソングを2」⑲〜

  メリーさんの羊   「メリーさんの羊」を練習することにした。 「アマール、いい声だわ。タニア、同じ曲を。素敵よ。 マリア、歌ってみて」 ところがマリアは「メリーさんの羊」を知らないのだ。みな笑う。 アメリカの有名な童謡です。 1877年、エジソンが世界で初めての蓄音機に録...

逃げないで聞け!

〜「天使にラブ・ソングを2」⑱〜

  逃げないで聞け!   理事長が「閉鎖まで波風立てないでくれ」と言っているのが聞こえた。 生徒たちはショックだ。 「閉鎖だって」 「冗談じゃねえ。家族全員が退学している。俺までごめんだ」 スケッチはせめて自分くらい卒業したい。 「アフリカ人の魂を見せてやる」きっぱり言ったの...

聖歌隊をつくるの

〜「天使にラブ・ソングを2」⑰〜

  聖歌隊をつくるの   ある日の授業で生徒の一人、女の子が綺麗な声で歌った。 「驚いたわ、どこで覚えたの?」とドロレス。 「ここ、音楽クラスでしょ」とちょっと照れていう。 「音楽クラスの進む道が見えたわ。聖歌隊をつくるの。決まりよ!」 でもみんなソッポ。 「聖歌隊はカンベン...

授業が退屈なわけ

〜「天使にラブ・ソングを2」⑯〜

  授業が退屈なわけ   校長や教師や尼僧たちが集まり、職員会議を開いています。 教師の言うことを聞かないのはなぜ? 授業が面白くないからだ。 「授業が退屈なわけをみんなで考えましょう」とドロレス。 「授業する方も眠いわ」と陽気なパトリック。 「性教育を入れたらどう?」「汚い...

一人で意地を張る気?

〜「天使にラブ・ソングを2」⑮〜

  一人で意地を張る気?   動こうとしないクラスメートに 「それでも仲間?」非難をぶつけるリタ。 「一人で意地を張る気?」ドロレスが訊く。 プイッ。 全身これ憤激となってリタが教室を出て行きました。 ドロレスは授業を続けます。 「今日のテーマはこれよ。成功したかったら周り...

努力はまっぴらよ!

〜「天使にラブ・ソングを2」⑭〜

  努力はまっぴらよ!   リタが意地悪く食ってかかります。 「落第させたきゃどうぞ。 私たち古いやり方で満足なの。努力はまっぴらよ」 ドロレスは落ち着き払い 「それがあなたたちの本心なら、私が教室にいる必要ないわ」 スタスタと出て行こうとする。 すがるように男子が一人「う...

授業を聞かない人、外へ出て

〜「天使にラブ・ソングを2」⑬〜

  授業を聞かない人、外へ出て   ドロレスの音楽の授業が本格的に始まりました。 最初にこうカマします。 「進学したいなら勉強して。全員落第でも私はかまわないわよ。 授業を聞かない人、外に出てもらいます」 「カセットをしまって。机の上に余計なものを出さないで。 教室は化粧品コ...

私たちも昔はそう言われたわ

〜「天使にラブ・ソングを2⑫」〜

  私たちも昔はそう言われたわ   「型破りなシスターだ」と校長が言います。ドロレスのことです。 「彼女の過去を教えてくれ」 「私の経験から言うと好きにさせるのがいちばんね。 それが最善策なの」院長は慎重に答える。 職業に差別や偏見を持つ人は少なくない。 「彼女は過激すぎる」...