イクチオサウルス
大英博物館。常設品800万点。
城のような博物館の展示室を丁寧に見て歩いたメアリーは
発掘物展示室に来た。
一点、一点、見て進む。そこにあった。
「イクチオサウルス」。大きな化石だ。
11歳の少女が何日もかかって掘り出した収集家垂涎の的。
立派なガラスケースにそれは収納してある。
採集者の表記は別人だけれど。懐かしげに見入るメアリー。
誰かがケースの対面に近づいたのにも気付かない。
あたりの空気が濃くなる。ふとメアリーの視線に影が入った。
自分を見つめるシャーロットがいる。
メアリーにもシャーロットにも感情は読み取れません。
無表情のようでもあり、緊張に耐えられないようでもある。
シャーロットは迎えに来たのだ。
「私との愛のために生きて」
そう語りかけたシャーロットの心の声が
イクチオサウルスに聞こえた。
〜「アンモナイトの目覚め」〜