チェンチが相続した、すごい額を
「チェンチが財産を相続したの。すごい額よ」
叔母さんふたりは欲の皮が突っ張っています。レオノーラが
「実は私もチェンチと合わなくて」と水を向けたものだから滔々と
喋り出します。
「マーガレットは最期の3か月は家に閉じこもったまま。使用人は解雇。
チェンチが身の回りの世話も料理も看護も、一人でしたの」
最愛の母を誰にも触れさせず看護するチェンチ。
自分は娘を亡くし、チェンチは母親を亡くした。
自分の手から離れていこうとする、愛する者への悲しみが
レオノーラには手に取るようにわかった。