本は出来たのかい?
ヴィオレットはジャック・ゲランを訪ねます。
ちょうどバラの季節で彼は多忙でしたが快く招じ入れる。
「本は出来たのかい?」
「ボーヴォワールに渡したわ」ジャックはポカン。
金主にまず見せてくれるのが常識ってものだろ。
「それで?」
「お金を受け取りに来たの」
ブツもなく金だけくれ? ヴィオレットの押しの強さにたじたじ。
「もちろんだよ。小切手かい、現金かい?」
「現金で」
「この前のこと、僕らはバカだった」
この前というのは、ヴィオレットが別荘の森でジャックに迫ったが
「僕が好きなのは男だ」と拒否され、ヴィオレットが腹を立てた、
というだけの話。
「ごめん」の代わりが10万フラン!
〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」〜