きっと理由なんてないのだよ
卒業式。イノギさんから牡蠣鍋の招待のメールが入った。
卒業生たちへの挨拶も気もそぞろに、
出かけようとするホリガイに吉崎が声をかけた。
「ホミネ、事故死じゃない、自殺だった。
前の日の晩、俺たち飲んでいたのだよ。
でも何も変わっていなかった。いや、俺が気が付かなかったんだ。
何かあったはずなのに。
首吊る前の日でも、人はいつもと同じようにいられるのかな。
ホリガイさんとまた飲みたいと言ってた。
人ってさ、朝起きたら歯を磨くみたいに、スッと死ねるんだよな。
きっと理由なんてないのだよ」
ホリガイは振り切るようにイノギさんの元に向かう。
〜「君は永遠にそいつらより若い」〜