チューニングするだけよ
場面は過去にさかのぼる。
家を出て真奈の部屋に同居したすみれ。
真奈が話しかける。
「私もすみれみたいに誰とでも話せたらいいな」
「チューニングするだけよ。周波数を合わすのよ。
そうしているうちに、
本当の自分を引き出してくれる人に会えるかもしれないよ」
このとき「いるかも」と真奈は言ったのだ。
真奈の引っ込み思案のせいか、
すみれの抑制力のせいか、二人はもどかしく
お互いの周りをぐるぐる回っていました。
踏み込めば違う展開になったでしょうが、
本作はそうはせず、あくまで心の中の劇に終始します。
そこが叙情的で綺麗、だけど掴み所のない感を与えました。
〜「やがて海へと届く」〜