何か終わっちゃう気がするのだろ
すみれの実家からの帰り道だ。
「お母さん、カメラは受け取らなかった。
中を見たら、何か終わっちゃう気がするのだろ」
「遠野くん、見たの?」
「俺にも勇気がない。
すみれは君に持っていてもらいたい気がする」
そして唐突に「俺、婚約したんだ」
真奈、「お母さんと遠野くんのあいだでは
すみれは死んだことになっているのだね」
「君は嫌かもしれないけど、
自分の中ですみれを生かそうとするのはやめようと思う」
遠野くんの気持ち、まともだと思うわ。
そうやって人は切実な悲しみを乗り越えていく。
でも真奈にとってはちょっと問題が違う。
すみれを生かしているのではなく、すみれは生きているのだ。
〜「やがて海へと届く」〜