わらべ歌聞かせてもらえない?
翌朝、まだ暗いうちに真奈は海岸にでた。
荒波が打ち寄せる。民宿の娘である高校生の女の子がきた。
父と祖母が行方不明のままだった。
「おばあちゃんとは浜辺で貝を拾ったり、
わらべ歌を教えてもらった」とインタビューに答えていた。
「わらべ歌、教えてもらえない?」と真奈は頼む。
海で亡くした夫の帰りを待つ妻の歌だった。
「東京ってどんなとこですか」
「行きたいの?」
「悩んでるんです。大学は東京に行きたいのです」
久しぶりに希望というものがあるのだと感じた。
「いいね」と真奈は答える。
〜「やがて海へと届く」〜