アン、一緒にいると楽しいわ
ひなびた山里をオンボロバスがいく。
アンとリー・ミンが山寺のワン先生を訪ねてきた。
穏やかな丸顔のワン先生。
「標本用のニンジン採りか。こちらは?」とリー・ミンに向く。
「実習生です」とアンが紹介する。切り立った山の中腹に採取場がある。
リー・ミンを助けてよじ登らせ、アンが赤い紐を張り回し結界を作る。
「ニンジンは人と同じで魂があるの。
先に縛らないと掘った時、魂が逃げてしまうのよ」
根を探り当て、小刀で注意深く掘り起こし、ニンジンを手のひらに。
土まみれの作業をするアンの横顔を見つめ
リー・ミンが息を漏らすように言う。「アン、一緒にいると楽しいわ」
アンは照れていたが、まんざらでもなさそう…。
いやいや、きっと嬉しかったのでしょうね。
〜「中国の植物学者の娘たち」〜