兄さん、人違いよ
チベットで軍役についていた、兄のタンが帰ってきた。
庭を掃いている若い娘の後ろ姿。てっきり妹のアンだと思い、
忍び足で近寄って背中から抱え上げる。
リー・ミンの悲鳴を聞いて飛び出したアン、
「兄さん、人違いよ、私はここよ」
アンとタンは仲のいい兄妹だ。
父教授は息子の帰郷が内心嬉しく
「ちょうどいい、明日私たちは遊びに行く、お前も一緒にどうだ」
教授が「私たち」と言っているのはアンと、リー・ミンを含めて。
彼は気難しい男ですが、
心の中ではリー・ミンを家族とみなしていました。
〜「中国の植物学者の娘たち」〜