ミレーヌ・ジャンパノイ

お願いが二つあります

〜「中国の植物学者の娘たち」(48)〜

  お願いが二つあります   手紙は続く。 「お願いが二つあります。一つは私の処刑で使われた弾丸の支払い。 7元8角です。 二つめは、崑林郊外の山の寺院の放生台に行き、 私とアンの遺灰を合わせ、湖にまいてください。 そうすれば安らかに眠れます」 &n...

院長先生、感謝します

〜「中国の植物学者の娘たち」(46)〜

  院長先生、感謝します   養護院の院長がリー・ミンからの手紙を受け取った。 「院長先生、感謝します。裁判の間、先生の証言を聞きました。 施設にいた私を褒めてくださった。 正直言って、褒められたのは初めてです。 他の証言や審判は私たちに何の意味もありません」 ...

同性愛が原因

〜「中国の植物学者の娘たち」(45)〜

  同性愛が原因   法廷で検察官が罪状を読み上げた。 「教授の記述によると、死に至る状態になったのは 心臓病ではなく、娘と息子の嫁が患った病気、不自然な同性愛が 原因であると。罪は明白です。 法的にも社会的にも人道的にも厳罰に処す」 アンとリー・ミンがお...

崑林市人民裁判所

〜「中国の植物学者の娘たち」(44)〜

  崑林市人民裁判所   手錠をはめられたアンとリー・ミンが護送車から降りる。 そこは崑林人民裁判所。長い階段を上がり、法廷へ。 兄のタンが帰ってきていた。荒れ放題の無人の植物園に来る。 妹と婚約者と父と美しい植物園があった。 幻燈を見た夏の夜。船遊びの日、父は...

二度と戻らないわよ

〜「中国の植物学者の娘たち」(43)〜

  二度と戻らないわよ   アンは意を決する。 この植物園と父から去ることはできない。 そう思っていた。しかしもうリー・ミンか、父と植物園か、 どちらかを選ばねばならない。 「父にここを離れると話してくる」 そういうアンに「二度と戻らないわよ」 言わ...

お父さん、お酒…

〜「中国の植物学者の娘たち」(41)〜

  お父さん、お酒…   舞台となっている崑林は崑崙。雲南省の省都です。 亜熱帯の雲南は雨が多い。 植物園にもけぶるような雨の降る午後。 機嫌がおさまらず、自分の茶碗におかずをよそい、教授は プイと自室に引っ込んだ。 「お父さん、お酒」とアンが差し出したが...