どうしてもどうしても

 

どうしてもどうしても

 

タキの遺品整理している遺族が封をされたままの古い手紙を見つけた。

差出人は「時子」。

「きょうのお昼過ぎ、1時頃にお訪ねくださいませ。

どうしてもどうしてもお会いしたく思います」

このあと時子は夫とともに防空壕で死んだ。

タキは二人を会わせなかったのだ。なぜ。

もちろんそれが時子のためにいいと判断したからだ。

でもそうだったのだろうか。

「どうしてもどうしても」時子の声を心の中で聞く。

重い自問自答をタキは一生繰り返します。

 

(「小さいおうち」 )

 

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