ちょっと出かけるからね

 

ちょっと出かけるからね

 

「ちょっと出かけるからね」

そう言って玄関に来きた「奥さまのなさろうとしていることが」

タキには瞬時にわかりました。

「私の頭は混乱しました。私の中にふたりの私がいて、一人は

会わせない方がいい、何が起きるかわからないからいけない。

もう一人は、これきり会えないのだから何が起きようと、

会わせてさし上げたいという」

タキはわずか数秒ですが、激しく迷いに迷う。どっちが奥さまの幸せか。

タキの選択の基準はどこまでも「奥さまが幸せであること」でした。

 

 

(「小さいおうち」 )

 

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