いやなのね

 

いやなのね

 

「私に縁談が来た」とタキの独白。
「相手は私の郷里の中学校の先生。立派なインテリだが年は50過ぎ。
子供は3人いてすでに孫もいる。3回目の結婚だという」
見合いの席。
先生「タキさんは東京へ来てからいっぺんも病気になっておられんとか」
付き添いの女性「嫁の務めは子供いっぺ産むことガンス」
女中部屋に引き取ったタキの様子を時子は案じた。
入ってくるなり「いやなのね」
続けて「そうよ、当たり前よ。いやに決まっているわ。心配しないで、
私、断るわ。いくらなんでも図々しいわ」
タキは泣きながら「せっかく旦那さまが口をきいてくださって、若い人は
戦争にとられるから、年寄りがいいと」
「あのお年なら鉄砲の玉に当たらなくたって先は知れているじゃないの」
時子も言いますね。

 

 

(「小さいおうち」 )

 

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