いま来たお客さん、素敵よ

 

いま来たお客さん、素敵よ

 

時子がいつになくはしゃぎタキに「いま来たお客さん、素敵よ」

新年の年賀の客の一人に板倉がいました。

時子の夫、平井は玩具製造会社の常務です。

「デザイン部で採用した板倉正治君だ。美術学校を出た優秀な社員だよ」

時子は「主人の会社の人たちとはちょっとタイプが違うの」

タイプが違っても一緒でも、タキは恐れのほうが強い。

嫉妬ではありません。そんなもの、タキは持ちようがない。

時子が幸せならそれでいい。でもこの出会いは不安でした。

時子は「風と共に去りぬ」を読むほど文学好き、アート系の女性です。

板倉は(魅力的?)首をひねる風貌ですが、

そのはかなげながところが

脂ぎった会社の男と「違うタイプ」だというのだから仕方ない。

 

 

(「小さいおうち」 )

 

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