書き上げたのね、飛行機で読むわ
案の定、ボーヴォワールは「香水のゲラン? 信用ならない。
彼が収集するのは死んだものだからよ。でも言葉は生きて動いている。
物への偏愛は病気よ」
手稿本蒐集家のゲランを病気だと断じます。
でも前金10万フランは「大歓迎ね」と賛成する。
ヴィオレットが手渡した原稿“飢えた女”を
「書き上げたのね。飛行機で読むわ。その顔は何?
生きて帰るわ」
「ニューヨークに着く前にもし飛行機が墜落したら?」
ボーヴォワールは取り合わず「空港へ」
彼女はサルトルと約3ヶ月に及ぶアメリカの講演旅行に出発です。
〜「ヴィオレット〜ある作家の肖像〜」〜