誰にでもありません
校長室で。手紙を読む校長。
「君の言葉が僕を愛撫し、僕の視線が君に口づけする…
君が書いたのかね」とアレクサンドルに尋ねる。
「本の写しです。ロシュフコーです」悪びれない少年。
「傲岸な態度は好ましくない 誰にあてたものだね?」
「誰にも」キッパリとアレクサンドル。
「将来の修道士として恥ずべき行為と思わないのか。
もう一度訊く。誰にあてた手紙だ」
「誰にでもありません」強い口調で否定する少年。
「復活祭の休暇の後も自宅に残ることになるぞ」
あんに放校を示唆する。「どうかね」
かぶりを振るアレクサンドルに校長、弱る。
「連れて行きなさい。跪く罰を与える」
アレクサンドルは最後まで口を割らない。
あどけない顔に似合わぬ、骨っぽい少年です。
〜「寄宿舎〜悲しみの天使〜」〜