誘ってくださり感謝します
アンニャは母親にテルマを紹介した。
母親は「娘のお友達ですもの」とコンサートに連れて行ってくれた。
おしゃれして会場に行ったテルマは「誘ってくださり感謝します」
行儀よく挨拶する。
「ダニエルは来ないの?」とアンニャに小声で訊く。
「彼とは別れた。ママには内緒よ。気に入っていたから」
演奏が始まる。アンニャがテルマの指を握る。テルマは微笑みを返す。
天井の大きなシャンデリアが明滅し、発作が起こりそうになり
テルマは席を外した。心配したアンニャが探しに来る。
ホールには誰もいない。テルマの頬をなで、キスした。
テルマの脳内では、アンニャを激しく抱擁している自分がいる。
欲望を抑えきれない。異界に滑り込む自分に恐怖と快感を覚える。
〜「テルマ」〜