リンダ、失礼、リディア
兄のトニーが帰ってきた。ターに気づく。
「リンダ、失礼、リディア」
ターは本名リンダを、ヨーロッパふうにリディアに変えていた。
「帰っていたのか。ここは隠れ家か」
「なぜ私が隠れるの?」
「知らねえ。俺には関係ねえ。だが訳ありだろ。迷子の顔だよ」
ターの母親は存命だし兄もいる。
しかし家族とは関わりを絶っていたのだろう。
兄の「俺には関係ねえ」は自分達を避けていた妹への距離感がある。
最高を極めたが、ふり捨ててきたものもターには多かった。
そして結局、出発点に戻ってきたのだ。
〜「TAR ター」〜