部屋を
ブレンダが目を凝らす。
ハイウェイの向こうに女が現れた。
近づく。重いトランクを引きずり汗びっしょり。
女は汗を拭き、もう一人の女は涙を拭く。
ジャスミンが重い口で「部屋を」借りたいと言う。
「ここに」ブレンダは宿帳を押す。
「本当に泊まる? タクシーも呼べるよ」
宿泊客が迷惑そうな口ぶりだ。
「一晩でしょ?」
「さあ」
ブレンダは、家はあるが夢はない。
ジャスミンは家もなく行くあてもない。
男にも家庭にもあてのない女が2人、出会った。
〜「バグダッド・カフェ」〜