こんばんは、ミス・ジャスミン
ジャスミンとブレンダの溝は埋まった。
カフェが夕暮れ時にオープンする。
「こんばんは、ミス・ジャスミン」
「こんばんは、ミス・ブレンダ」
お互いは礼儀正しく笑顔で挨拶し、接客に向かう。
バグダッド・カフェはハイウェイ沿いにある。
長距離トラックの運転手たちが、休憩に立ち寄る。
コーヒーを注文した客が
「クラッカーはついてないのかい」(いつもはついている)
ジャスミンは長い太い腕をゆったりと広げ、
音もなく指の先からクラッカーを取り出した。
おお〜。ジャスミンの手品だ。
夫のトランクに手品のネタ本があり、
手すき時間に練習したジャスミンはすっかり覚えてしまったのだ。
ヤンヤの喝采。ブレンダにも笑顔が戻っている。
〜「バグダッド・カフェ」〜