召集されることになりました

 

召集されることになりました

 

11月の土曜の夜、板倉が来て告げた。

「僕のような丙種合格者も召集されることになりました」

時子は動揺する。タキだけが手に取るようにわかる。

そそくさと帰った板倉の背に時子の夫は

(めでたいのに)「酒くらい飲んでいけばいいじゃないか」ブツクサ。

夫はどこも悪くないのですが、時子にはデリカシーがないと映る。

その夫に比べ、芸術家肌の板倉の繊細な感性はどうだろう…

まったく恋は思案の外。

 

(「小さいおうち」 )

 

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