君の芸術の根底にあるのは平凡さだ
アルフレッドという友人はアッシェンバッハにとって
メフィストフェレスみたいですね(笑)。ぐさっとくることばかりいう。
「君は小さな過失をいつも忌み嫌う。
いじけた道徳観が完璧な作曲を妨げている。官能に打ち負かされ、
本当の汚れに身を晒せ。君の芸術の根底に何がある? 平凡さだ」
アッシェンバッハはタジオによって、とっくに官能に打ち負かされているのだから、「いや〜、俺も実はそう思っていたのだよ」と大笑いすればいいのに、
すっかりうろたえミュンヘンに帰る、ですって?
しっかりしてよ、肝心なときに。