タジオ、お別れだ、幸せに
心の中でアッシェンバッハがつぶやくセリフ。
彼がベニスを去るのは、もちろんコレラ感染の恐れもあるけど、
これ以上タジオのそばにいると、自分がどうなるかわからない焦燥に襲われているからでもあります。タジオが自分を乗っ取る。
アルフレッドなら「乗っ取られたらいいだろ!」というところでしょう。
レストランの入り口ですれちがうタジオと教授。
ふたりは一瞬足を止め、見つめあうのです。
タジオだって何か感じているのよね。だからアタックすれば別の活路が開けたかもしれないのに、トーマス・マン(原作者)といい、ヴィスコンティといい、現世的な快楽と欲望に、抑制的ですね。