監督 セバスティアン・レリオ

「ここはダメ」

〜「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」㉑〜

  「ここはダメ」   エスティの授業が終わるのをロニートは校門で待っていた。 笑いかけたけれど、エスティは怖い顔をして スタスタと通り過ぎる。 「エスティ、どうしたの?」 「きのうの私は愚かで分別にかけていた。世間体があるのに。 とにかくこんな関係は終わりよ」 「いいわ」...

「さっきのは、エスティ?」

〜「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」⑳〜

  「さっきのは、エスティ?」   日が暮れています。二人が通りであったのはまだ午後も早かった。 大きくもない町を、何時間歩いていたのでしょう。 近所の人が明かりの下にいる二人を認めて声をかけたが エスティは無言で背を向けた。 「さっきのは、エスティ?」 「違うわ」ロニートは...

また会えたなんて

〜「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」⑲〜

  また会えたなんて   野原の真ん中にある大きな木の下に来た。 「ここで初めてのキスを」 「また会えたなんて」 ロニートがニューヨークへ去って、 一生会えることはないとエスティは思っていた。 でもラビの死は、 もしかしたらロニートに会えるかもしれない たった一つのチャン...

ほかの女性と関係を?

〜「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」⑱〜

  ほかの女性と関係を?   「あなたは? 幸せ?」とエスティが訊く。 「幸せよ」とロニート。 「他の女性と関係は?」とエスティ。 「いいえ。特には」 「あなたは?」ロニートが訊き返す。 エスティ、首を横に振る。 「今も女性だけを好き?」 エスティ、小さな声で「うん」とう...

わたしが去って大丈夫だった?

〜「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」⑰〜

  わたしが去って大丈夫だった?   ふたりは肩を並べて、町を歩いた。いつもそうしていたように。 「私が去って大丈夫だった?」ロニートが訊く。 「病気になったわ。精神的なやつ。 ラビに心配されたし、彼は結婚したら治ると思ったらしいの。 どうせ男と寝るなら親友がいいと思って、ドヴ...

わたしがあなたに知らせたの

〜「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」⑯〜

  わたしがあなたに知らせたの   ストーリーは急展開します。 「ロニート、大丈夫?」 動悸がおさまらないロニートをエスティは気遣います。 エスティのほうが落ち着いています。 「私がニューヨークのシナゴーグに電話してあなたに知らせたの」 誰も伝えなかった父親の死を教えたのはエ...

エスティ、エスティ、どうしよう

〜「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」⑮〜

  エスティ、エスティ、どうしよう   「ロニート」「エスティ」 名をささやいているうちにこみ上げてくるものがある。 「あなたを見たとき、わたし…」「ええ、わたしもよ」 エスティの指先、胸をつたうかすかな動き、昨日のようによみがえる。 「エスティ、エスティ、どうしよう」ロニート...

ダメ、ずっといてほしい

〜「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」⑭〜

  ダメ、ずっといてほしい   通りでエスティはロニートと出会い、父親の家に案内します。 生まれてから住み慣れた家です。 書斎に入って「父はいつもここで本を読んでいた」 エスティは「その間、私たちは自由に…」 かすかに思い出し笑いをしている。 「私は早くニューヨークへ帰るべき...

最期を看取るべきだった

〜「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」⑬〜

  最期を看取るべきだった   さらに叔父さんは「父親の最期を看取るべきだった」責める口調です。 「知らなかったのよ」 「町にいないからだ!」 家族というコミュニティは絶対のもので、 親のそばを離れ、あまつさえ看取りもしなかった子は言語道断である、 そんな感じです。 「君も...

父の家を売りたい

〜「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」⑫〜

  父の家を売りたい   「父の家を売りたい」とロニートが叔父に頼みます。 叔父は 「遺言書によれば、ラビは自宅と所持をシナゴーグに寄付すると」 娘にはビタ一文残さない。 ロニートは改めて父の怒りの強さを覚える。 「ショックかね」と叔父。「いいえ。たかが家よ」 教義に厳しい...