メラニー・ロラン

8月の末

〜「ミモザの島に消えた母」(21)〜

  8月の末   「クラリスは8月の末になると、関係を義母が知ったというようになった。 子供を連れてロンドンの姉のところへ逃げる対策をした。 子供を迎えに行ったあと、19時に駅へ行くわ。そうクラリスが言った。 私は幸せだった」 クラリスも思い切った決心をしたもの...

私たちは離れられなくなった

〜「ミモザの島に消えた母」(20)〜

  私たちは離れられなくなった   「すぐに私たちは離れられなくなった」 「父は知っていた?」アントワーヌが質問する。 「わからない。仕事がいちばん忙しい時期で留守がちだった。 クラリスは夫の不在に苦しんでいた。特に義母との関係に」 クラリスの死後、思い出話をタ...

ジーンっていうの。よろしく

〜「ミモザの島に消えた母」(19)〜

  ジーンっていうの。よろしく   「半年がまんした。また会いたくて恋い焦がれた。 そしてあの夏、ノアールムーティエ島へ。賭けに出たの」 島の海辺は海水浴でにぎわっていた。 子供たちと波打ち際で遊ぶクラリスがいた。 ジーンを認めたクラリスが快い微笑で迎えた。 ...

人妻とは知らなかった

〜「ミモザの島に消えた母」(18)〜

  人妻とは知らなかった   ジーンは回想した。 「なめらかでいいわ」そこはパリの絵画教室。 講師のジーンが生徒のクラリスに助言している。 「技術的には申し分ない。あとはあなたの内面を」 授業が終わってジーンが話しかけた。 「うちにギュスタヴ・ドレの絵があ...

「彼女ね」「たぶん」

〜「ミモザの島に消えた母」(17)〜

  「彼女ね」「たぶん」   クリスマスの夜のパリ。 アントワーヌとマルゴはとうとう「ジーン」をたずねあてた。 タクシーから降りて見上げた。 「ジーン・ワイズマン」。 通りに面した2階の壁面が総ガラス張りの大きな画廊だった。 背の高い細い、パンツスーツの女...

ジャンは英語読みだとジーン

〜「ミモザの島に消えた母」(16)〜

  ジャンは英語読みだとジーン   ジャンは英語読みでジーン。女性名だ。 アントワーヌは改めて娘と向き合い、彼女の恋人の話を聞く。 打ち明けて父親がわかってくれて娘は嬉しかった。 でもアガットは「もうその話はしないで」プイと去る。 母親の恋人が女性だったことに腹...

私はポーリーヌを愛している

〜「ミモザの島に消えた母」(14)〜

  私はポーリーヌを愛している   マルゴはパパのケータイにメールした。 「パパ、私はポーリーヌを愛している」 部屋でキスしていた女友達です。 でもあの調子では…どことなく不安。メールを削除した。 マルゴは思い切って叔母のアガットを職場に訪ねた。 女の子を...

ウィズマンはママの愛人?

〜「ミモザの島に消えた母」(13)〜

  ウィズマンはママの愛人?   「パパが話したいって。ウィズマンのことで」 妹のアガットが言うので会いにいった。 「お前が母の死が気になるのはわかるが行き過ぎだ」 「ウィズマンはママの愛人? ママは自殺? 彼のせいで?」 「時計は私がカナダ出張の際、ママに贈っ...

永遠に ジャン・ウィズマン

〜「ミモザの島に消えた母」(12)〜

  永遠に ジャン・ウィズマン   錆び取りした母の遺品の時計の裏蓋に文字が彫ってあった。 「永遠に ジャン・ウィズマン」 アントワーヌは検索でジャン・ウィズマンなる人物を洗い出し 一人ずつ電話していった。 「あなたは1975年生まれ? じゃ違いますね」 ...