ママ…

 

ママ…

 

アガットは回想する。ママが死んだ年の夏だった。

庭で兄と遊んでいたアガットは母親を探した。

「ママは? 待ちくたびれちゃった」

そう言って母屋に駆けていった。

窓越しにママが見えた。

当時、家に逗留していた女性だ。

抱擁の激しさがただならぬ気配を伝えてくる。

「ママ…」アガットは幼いながら言葉をなくした。

 

〜「ミモザの島に消えた母」〜

 

 

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