ジョン・キューザック

剥き出しの孤独の上に

〜君の名を書く…「マップ・トゥ・ザ・スターズ」㉛〜

剥き出しの孤独の上に  アガサとベンジーは元の家の焼け跡にいる。大量に薬を嚥下する。「13回夏を過ごした。文句ないさ」と弟。「そうね。悪くないわね」と姉。指輪をお互いの指にはめる。「この指輪にて聖別され、わが夫に」「汝の夫に聖別されたり」「この指輪にてわが妻に聖別されたり」「汝の妻に聖別されたり」二人は寄り添...

終わりよ。わかる?

〜君の名を書く…「マップ・トゥ・ザ・スターズ」㉚〜

終わりよ。わかる?  玄関のチャイムが鳴った。ベンジーがいた。病院を抜け出して、行くところがないと床にうずくまる。姉は静かな声で「よく聞いて、ベンジー。もう何も残っていない。終わりよ。わかる?これは母さんの指輪。父さんのを手に入れて」ベンジーは出て行く。家に帰ると静まり返っている。プールサイドに焼死体が。母が...

「すみません」「それ、やめて」

〜君の名を書く…「マップ・トゥ・ザ・スターズ」㉙〜

「すみません」「それ、やめて」 アガサは見ていました。車の中のハバナとジェロームを。だって家の玄関に横付けさせてやっているのだもの。ハバナが車から降り、スカーフでシャッと股を拭く。ジュリアン、そこまでやるか。家の中にアガサがいた。「遅いわよ」「すみません。体調がよくなくて」アガサはカウチに腰掛ける。「私は朝5...

頼んだら私とやる?

〜君の名を書く…「マップ・トゥ・ザ・スターズ」㉘〜

頼んだら私とやる?  こちらはハバナ。ジェロームの運転する車に乗っている。アガサの恋人だと知っている。「目的は何なの?」とハバナが後部座席から訊く。「目的?」「ヤケドの件よ。彼女とやるの、気味が悪いでしょ」「でもない」「手袋は取るの? 友だちに紹介した?」「ヤケドが絡む脚本を書いています」「リサーチってことね...

兄妹とは知らなかったの

〜君の名を書く…「マップ・トゥ・ザ・スターズ」㉗〜

兄妹とは知らなかったの 後で知った秘密とは、両親が兄妹ということ。母親は苦しげに「別々に育てられたの。出会ったのは大学のキャンパスで」そこへ父親が帰ってきた。恐ろしい見幕でアガサに掴みかかる。「日記を見つけたの。愛は死よりも強いって」耳を貸さず、父親は力任せに引きずりドアから突き出した。「私の結婚指輪を抜いて...
水

変よね。あとで秘密を知った

〜君の名を書く…「マップ・トゥ・ザ・スターズ」㉖〜

変よね。あとで秘密を知った 「昔の家を何度も夢で見た」とアガサが母親にいう。「こっちへ戻って最初に行ったの。空き家だった。物心ついたときから同じ夢を見るの。ベンジー(弟)と結婚するのよ。テントで。変よね。あとで秘密を知ったの」アガサの声は抑揚がありません。母親は青ざめています。 (「マップ・トゥ・ザ...

いずれ来ると思っていた

〜君の名を書く…「マップ・トゥ・ザ・スターズ」㉕〜

いずれ来ると思っていた アガサが母親クリスティーナを訪ねました。「償いがしたいだけ」という娘に「いずれ来ると思っていた」と母。「もう7年になるのね。こわかったの。あなたのやったことが」アガサはロスに戻ってから、最初に元の家の焼け跡に行ったと告げます。彼女は放火した。睡眠薬を飲んでいたというが、もともと精神的に...

名前は「静寂の時」

〜君の名を書く…「マップ・トゥ・ザ・スターズ」㉔〜

名前は「静寂の時」 買ってくるのは便秘薬、名前は「静寂の時」だとハバナがいう。便器に腰掛け、下半身むき出しで、アガサを全然気にしない。相手は完全に“秘書奴隷”です。呻いていたハバナは立ち上がり、お尻を拭き、ポイと紙を捨て、「いやだ、臭うじゃない」顔を歪め、手のひらをハタハタさせる。アガサを人間扱いしていないと...

母親はクラリス・タガート

〜君の名を書く…「マップ・トゥ・ザ・スターズ」㉓〜

母親はクラリス・タガート ハバナがテレビでインタビューを受けている。「母親はクラリス・タガート。1970年代の名優です。76年のクリスマスに焼死しました。お母さんが中毒だった事実を明かし、ご自身が受けた性的虐待も告白された。異例です。普通は男性、父親か継父による虐待ですが」とアナウンサーがいい、撮影中の「盗ん...

放火した、でも故意にじゃない

〜君の名を書く…「マップ・トゥ・ザ・スターズ」㉒〜

放火した、でも故意にじゃない アガサが元の家の焼け跡で、運転手のジェロームとデート。この家はベンジー・ワイスの家で、家事で焼けた、ベンジーは弟で、自分が放火した、でも故意にじゃない、とアガサは打ち明け、「脚と背中とお腹に火傷の跡があるから、脱がさないで」とジェロームに頼む。焼け残った石や壁のある、寒々とした焼...