放火した、でも故意にじゃない
アガサが元の家の焼け跡で、運転手のジェロームとデート。
この家はベンジー・ワイスの家で、家事で焼けた、ベンジーは弟で、自分が
放火した、でも故意にじゃない、とアガサは打ち明け、
「脚と背中とお腹に火傷の跡があるから、脱がさないで」とジェロームに頼む。
焼け残った石や壁のある、寒々とした焼け跡で、服を着たままの無言のセックスです。
全然温かみがない。ないといえば、食事とか、笑いとか、
普通の家族にならどこにでもあるものがこの映画にはありません。
精神に失調のある放火魔の娘、娘を毛嫌いする父、娘が戻ってきたことを泣く母親、
母親の泣き声を聞きながら無関心な弟。
これは「ラビッド」や「ザ・ブルード/怒りのメタファ」や
「イグジステンス」などの延長線上にある、
クローネンバーグの形を変えたクィア映画です。