「すみません」「それ、やめて」

「すみません」「それ、やめて」

 

アガサは見ていました。車の中のハバナとジェロームを。

だって家の玄関に横付けさせてやっているのだもの。

ハバナが車から降り、スカーフでシャッと股を拭く。

ジュリアン、そこまでやるか。

家の中にアガサがいた。

「遅いわよ」「すみません。体調がよくなくて」アガサはカウチに腰掛ける。

「私は朝5時に起きて14時間働いているわ。あなた、変よ、なんだか汚いし」

「すみません」

「それ、やめて! やっぱり無理なのかも。フロリダに帰ったら?」

アガサが立ち上がった。

「なに、これ!」ハバナが悲鳴をあげる。真っ白なカウチに血痕が。

「1万2000ドルのカウチに出血したとは。タンポンしていないの?

いますぐ消えて! いかれたメスブタ!」

怒声を浴びせるハバナ。アガサの目が座っている。

金色の像を取り、無言で振り下ろす。血しぶきが飛び、痙攣するハバナを

冷たく眺め、繰り返し、絶息するまで打ち続ける。もっとも残酷なシーンです。

 

(「マップ・トゥ・ザ・スターズ」)

 

 

bn_charm