アリシア・ヴィキャンデル

水

飛ばせてあげて

〜「リリーのすべて」㉓〜

飛ばせてあげて ゲルダは故郷の海を見下ろす崖の上にハンスといます。ハンスはアイナーの幼な友だちであり、アイナーがリリーに変わることに不安と躊躇と、孤独を感じていたゲルダを支えました。ゲルダがリリーにあげたスカーフを、リリーは最後まで身につけていました。風に乗ってスカーフが舞い上がる。ハンスが手を伸ばしたが、ひ...

私はやっと本当の自分になれた

〜「リリーのすべて」㉒〜

私はやっと本当の自分になれた 二度目の手術の後、リリーは危篤に陥ります。意識が戻ったわずかな時間、外が見たいという。ゲルダは車椅子を押して庭にでる。細い声でリリーが「私はやっと本当の自分になれた」と微笑む。でももう時間がなかった。「昨夜美しい夢を見た。夢の中で私は赤ちゃんで、母は私を見つめ、リリーと呼んでいた...

先生のような夫が欲しい

〜「リリーのすべて」㉑〜

先生のような夫が欲しい 主治医ヴァルネクロス教授が執刀します。リリーは教授に全幅の信頼をおいている。命を預けている。で、こういうのです。「先生のような夫がほしい。本当の女のようにいつか子供も産みたい」リリーの夢はもはや待ったなし、すぐそこに実現可能になった。それはいいのだけど…思ってしまうのよね。ゲルダはどこ...

早く体を完成させたいの

〜「リリーのすべて」⑳〜

早く体を完成させたいの まだ体力の回復が充分でないというゲルダの恐れを振り切るようにリリーは2回目の手術に臨むと言います。「早く体を完成させたいの。ゲルダ、きてくれる?」やむにやまれぬ衝動がリリーを突き動かしている。ゲルダはきっぱり、女になる夫を受け入れます。再び手術に同行する。リリーにしても最後の支えになる...

アイナーは死んだのよ

〜「リリーのすべて」⑲〜

アイナーは死んだのよ トム・フーパー監督は冷静にリリーとその妻を描きます。リリーがゲルダに言う。「アイナーは死んだのよ。受け入れないと。あなたに面倒見てもらったけど、私は自分の人生を生きる。あなたも同じよ」まるで未亡人に対するような言葉に、ゲルダは突き放されてしまいます。ゲルダがよく自分を見失わずにいたと思い...

まちがいを正したの

〜「リリーのすべて」⑱〜

まちがいを正したの 1回目の手術を終えたリリーは、ゲイの友だちのヘンリクに会います。ヘンリク「医者がつまり、処置したのかい?」リリー「まちがいを正したの。神が私を女にしたのよ。そしてお医者さまが、間違った肉体を治してくれているの」ヘンリク「本当の女に?」もの静かに話すリリーに、迷いも疑問もありません。本来の自...

あなたが結婚する夢よ

〜「リリーのすべて」⑰〜

あなたが結婚する夢よ 「けっこん?」ゲルダは問いかけます。「あなたは私と結婚していたわ」と元夫にいう。リリーはこう返す。「アイナーとね」「アイナーとだけど、あなたと私、なのよ」ゲルダの口調が強くなったとしても責められないと思います。アイナーの心の中で男性のアイナーはいなくなり、肉体的にもいなくなろうとしている...
水

あなたが私を美しく強くした

〜「リリーのすべて」⑯〜

あなたが私を美しく強くした でもゲルダは手術を前にしたリリーの元へ行きます。「私がついている、リリー」と呼びかけます。ゲルダもリリーが夫にとって最も自然な呼び方だと思いました。リリーはゲルダにささやく「あなたが私を美しく強くした」そうでしょうよねえ。ゲルダの愛がなかったらリリーはここまでたどりつけなかった。そ...

彼を消しにいく

〜「リリーのすべて」⑮〜

彼を消しにいく ゲルダは手術に立ち会うために一緒に病院に行かせてと頼みます。リリーは「ダメだ、君はアイナーを愛している。でも僕は彼を消しにいくのだ」リリーの心の中ではもはやアイナーはいないも同然。気持ちの上では前を向いて進むリリーが、だんだんゲルダとの距離を引き離していく。アリシア・ヴィキャンデルが、置き去り...

彼はご主人ではなくなります

〜「リリーのすべて」⑭〜

彼はご主人ではなくなります 教授は手術の説明をします。「1回目は男性器の切除。2回目は体力の回復後、膣の形成。二度と戻れない。失敗する可能性も高いし、感染症の恐れもある」「危険すぎるわ」ゲルダは恐れますが、手術して女性になることは、リリーが自分を取り戻すことです。リリーは決然と同意します。医師は最後に言います...