監督 フランシス・リー

母さん、来て、早く!

〜「アンモナイトの目覚め」(12)〜

  母さん、来て、早く!   翌朝、息をゼロゼロ言わせながらシャーロットがメアリーの店に来た。 メアリーがドアを開けたとたん、支える間もなく、床に崩れる。 仰天して抱き起こすが、どうしていいかわからない。 「母さん、来て、早く!」メアリーは大声で母親を呼んだ。 ...

ここで止まれ

〜「アンモナイトの目覚め」(11)〜

  ここで止まれ   「ここで止まれ」箱のような荷車を押す男の声。 ネグリジェのような水着を着たシャーロットの足元の床は板張りで、 隙間から寄せて引く波が見える。 大きな箱車の出口に、取り付け自由な梯子階段が置かれた。 目の前は灰色の冬の海だ。波は高い。 ...

ひとりで泳げば?

〜「アンモナイトの目覚め」(10)〜

  ひとりで泳げば?   シャーロットがメアリーの後ろを歩く。荒波が打ち寄せる浜辺だ。 足取りは重く、屠殺場に引かれていく仔牛みたいだ。 メアリーが掘りかえす岩の目星をつけている。 「あれは?」後ろで声がする。 シャーロットにも気のついた岩があったらしい。 ...

妻をライムに残すことにした

〜「アンモナイトの目覚め」(9)〜

  妻をライムに残すことにした   「ほかに何か?」用件がすんでもグズグズしているロデリックに 不審気にメアリーが訊く。 「実は妻がウツなのだ。医者は海辺でのんびり過ごせと。 ライムに残すことにした。浜辺を歩いて君から学ばせたい」 シャーロットも地質学者なのです...

君は抜け殻のようだ

〜「アンモナイトの目覚め」(8)〜

  君は抜け殻のようだ   波止場を歩きながら夫が妻に言います。 「もう耐えられないよ。君は抜け殻のようだ。 考古学ツアーに同行を期待するなんてどうかしていた。 回復には時間がかかる。ここ(ライム)は格好の保養地だ。 明るく陽気で賢い妻に戻ってほしい」 「...

小さな魚の骨が見える

〜「アンモナイトの目覚め」(7)〜

  小さな魚の骨が見える   翌日ロデリックはメアリーから化石採集の手ほどきを受けます。 メアリーはロデリックが浜辺で見つけた石を一目見ただけで 「これはダメ」「これはいい」と識別し 「よく観察すると小さな魚の骨が見えるでしょ。 この黒い斑点は魚のウロコなの。磨...

子作りの気分じゃない

〜「アンモナイトの目覚め」(6)〜

  子作りの気分じゃない   シャーロットは初めての子を死産しています。 以後すっかり落ち込み夫婦はセックスレスで会話なし。 陰気な妻になっています。そんな妻から夫は遠のき ベッドで妻が近寄っても「子作りの気分じゃない」 不機嫌そうに背を向ける。 1830...

焼いた白身魚をソースなしで

〜「アンモナイトの目覚め」(5)〜

  焼いた白身魚をソースなしで   ロデリックとシャーロットが夕食のレストランに来ました。 夫は念入りにメニューを確かめ 「スープは?」と訊く。給仕「野うさぎです」 「ステーキはレアで。セロリのブレゼとポテトのホワイトソース。 35年のクラレットをボトルで。 ...

シャーロット・マーチソン

〜「アンモナイトの目覚め」(4)〜

  シャーロット・マーチソン   「シャーロット・マーチソンだ」 シアーシャ・ローナンです。 東京オリンピックの開会式の、 カザフスタンのお姫さまのような雰囲気。 チラとメアリーは見るが無関心に目をそらす。 シャーロットも、見るからにとっつきの悪いメアリー...