Diversity Studies

奥さま、この頃少し変なのです

〜小さいおうち⑱〜

  奥さま、この頃少し変なのです   「私の心臓は妙な打ち方をした。それから二度、奥さまは板倉さんの 下宿に出かけた。二度とも洋装だった。 ある日「奥さまの親友の睦子さんがいらした」 タキは思い切って悩みを打ち明ける。 「奥さま、この頃少し変なのです。 私、どうしたらいいかわ...

今でもはっきり覚えている

〜小さいおうち⑰〜

  今でもはっきり覚えている   「ただいま」「おかえりなさいませ」 タキは帰宅した時子を「今でもはっきり覚えている」 後ろ姿の帯の一本独鈷の筋が、今朝とは逆になっていた。 奥さまの帯が解かれるのが、その日初めてではないのではとタキは思う。 タキが愛してやまなかった、小さなおう...

白いお太鼓の端に太い筋が一本

〜小さいおうち⑯〜

  白いお太鼓の端に太い筋が一本   時子のいでたちはとても大胆でした。 「奥さまは黒っぽい着物に、白い帯のお太鼓の端に、黒の太い筋が一本」 板倉の下宿先には、おじさんの囲碁仲間が来ていました。 「どこかで見た女だなあ」と首をひねる。 「どこだったかなあ」 二階では板倉の腕が...

一人で出かけるから

〜小さいおうち⑮〜

  一人で出かけるから   ノートを書きながらタキの独白。 「だんだん辛い話になってきた。でも書かなければならない。 そう決めたのだから」 時子はハガキを書いた。「板倉さんの本当のお気持ちをお伺いしたく、 3日の日曜日にまたお訪ねします」 「本当の気持ち」というところが意味深...

「君、少し意見してきなさい」

〜小さいおうち⑭〜

  「君、少し意見してきなさい」   「この縁談には我々の会社の仕事が絡んでいるのだから、 ぐずぐずしてもらっちゃ困るのだよ。君、少し意見してきなさい。 二人も候補者を立ててやったのに、どっちも断るなんて非常識だよ。 結婚は業務命令だ」 イライラする夫に「業務命令だなんて、私も...

「するの?お見合い」「まさか」

〜小さいおうち⑬〜

  「するの?お見合い」「まさか」   ところが今度は板倉にお見合い話が。 持ってきたのは時子の夫です。 「するの? お見合い」 「まさか。するわけ、ないでしょ」 言を左右して断る板倉に業を煮やした夫は 「お前、この話まとめてくれんか。板倉君と君はウマが合うようだ」 次の日...

「奥さま」「なあに」

〜小さいおうち⑫〜

  「奥さま」「なあに」   この映画で唯一のタキの告白のシーン。 「奥さま」「なあに」 「私、お嫁になんかいかなくていい、一生この部屋で暮らして、 奥さまや坊ちゃんのお世話をしたいと思っています」 「なにいっているの。あなたは凛々しい若者と一緒になって、 幸せな家庭を作るの...

いやなのね

〜小さいおうち⑪〜

  いやなのね   「私に縁談が来た」とタキの独白。 「相手は私の郷里の中学校の先生。立派なインテリだが年は50過ぎ。 子供は3人いてすでに孫もいる。3回目の結婚だという」 見合いの席。 先生「タキさんは東京へ来てからいっぺんも病気になっておられんとか」 付き添いの女性「嫁の...

お前は想像力がないね

〜小さいおうち⑩〜

  お前は想像力がないね   「いよいよ登場しましたね、彼氏が」と健史。 タキが板倉を好きになる展開だと思っています。 タキは無視。 「お前は想像力がないね」とだけいい話題転換。 板倉は恋の相手ではない。ならば誰を想像すべきなのか。 タキは誰をも心の奥に入り込ませようとしませ...

可愛い顔してね

〜小さいおうち⑨〜

  可愛い顔してね   台風の夜、出張先から帰れないという平井の伝言を持って やってきた板倉は、そのまま泊まることになった。 雨の吹降りの中、窓の修繕をした板倉は恭一の部屋で眠りこんだ。 翌朝、帰りがけ「僕、眠っていましたか」「可愛い顔してね」 時子は板倉にキスして去る。 板...