一人で出かけるから

 

一人で出かけるから

 

ノートを書きながらタキの独白。

「だんだん辛い話になってきた。でも書かなければならない。

そう決めたのだから」

時子はハガキを書いた。「板倉さんの本当のお気持ちをお伺いしたく、

3日の日曜日にまたお訪ねします」

「本当の気持ち」というところが意味深です。

タキは続ける。

「次の日曜日。奥さまは一人で出かけるから、とおっしゃいました」

時子の体から発する電磁波のようなものをタキは感じとっています。

タキにしかわからないものです。

 

(「小さいおうち」 )

 

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