Diversity Studies

取引しよう

〜「太陽と月に背いて」⑬〜

  取引しよう   ランボーがヴェルレーヌに持ちかける。 「取引しよう。君は僕を助け、君は僕を助ける。 一緒ならいい仕事ができる。充分に吸収しあったら、別れればいい」 「生活は?」とヴェルレーヌ。 「金はあるだろ」ランボーがちょっと小狡そうに言う。 「俺は君の生活を支え、君は...

まさにくだらん詩だ

〜「太陽と月に背いて」⑫〜

  まさにくだらん詩だ   ヴェルレーヌがランボーを詩人の集まりに連れて行った。 ランボーの詩は酷評される。 「君の詩は確かに見事だが、わざと人を驚かす効果を狙っている。 私は驚かなかった。邪道だからだ」 ランボーも黙っていない。 「まさにくだらん詩だ。あんな寝言は詩への冒涜...

僕は天才になる

〜「太陽と月に背いて」⑪〜

  僕は天才になる   ランボーが回想する。そして宣言する。 「去年の夏、戦争中によく家を抜け出して川へいった。 若いプロシャ兵が眠っていた。しばらく見ていたら死んでいるとわかった。 その時ひらめいたんだ。詩人になるには全てを経験する必要があると。 自分の経験だけでなく、他人の...

だが君も悪い

〜「太陽と月に背いて」⑩〜

  だが君も悪い   マチルダが何気なく訊く。 「父の十字架は返した?」ランボーが盗んでいった十字架です。 ヴェルレーヌは逆上する。 「一文無しの彼を追い出す人間(義父のこと)に キリストを壁にかける権利はない。貧乏は辛いものだ。 彼は本を買えないから盗んだのだ」 やにわに...

当然さ、理想的な妻だ

〜「太陽と月に背いて」⑨〜

  当然さ、理想的な妻だ   ヴェルレーヌはランボーが止まっている安宿に来ました。 濡れた衣類を乾かします。マチルダを愛しているのかという質問に 「当然だろ。理想的な妻だ」 その理由は「18歳で美人だ。金もある。子供も産まれる」 「共通の趣味は?」とランボー。 「ない」「知性...

彼の家だろ

〜「太陽と月に背いて」⑧〜

  彼の家だろ   マチルダの父親がヴェルレーヌをとがめます。 「何で他人をこの家に入れた。働いて自分の家くらい持て。 (ランボーに)くすねた物を返せと言え。幸い、彼は出て行ったが」 「何と!」ヴェルレーヌは飛び上がり、脱兎のごとく雨の街へ走りだす。 ランボーは雨の中でベンチに...

私は友達を助けねばならん

〜「太陽と月に背いて」⑦〜

  私は友達を助けねばならん   ヴェルレーヌ邸(正確には妻の邸宅)に泊まったランボーは 書斎の本は盗む、飾り物は壊す、精巧な蝶の剥製はブローチにする… 狼藉の限りです。 彼にのめり込む夫に「彼の世話は他の人に任せた方がいいと思うわ」と妻。 腹のなかを見透かされたヴェルレーヌは...

「僕は涙を流しすぎた」

〜「太陽と月に背いて」⑥〜

  「僕は涙を流しすぎた」   ヴェルレーヌは妻にランボーの詩を読んで聞かせる。 「僕は涙を流しすぎた 悲しい朝を見すぎた」 「私はあなたの詩が好きよ。こんな詩、わからないわ」 マチルダは正直にそう思う。 彼女はランボーが天才かもしれないが、 本質的にアウトサイダーであること...
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愛は存在しない

〜「太陽と月に背いて」⑤〜

  愛は存在しない   「愛だと?」ランボーは聞き返します。 「そうだ」「違うな」「どうして?」 「家族や夫婦を結びつけているのは愛じゃない。 愚かさやエゴや恐怖だ。愛は存在しない。 私欲は存在する。利益への執着は存在する。自己満足は存在する。 だが愛は存在しない。再創造が必...