いいえ、ちがう
「女二人の関係が、わたしにはどうも…」つかみきれない。
マリアの苦悩は深まります。
とうとう「この作品は男の幻想よ」と作品のせいにする。
「いいえ、ちがう」
ヴァルはきっぱりと否定します。
「シグレットのときもそう思った?」と訊く。
思わなかった。シグレットは若くて勝者で
ヘレナのような負け犬ではないから。
ヘレナを演じることが、若い女優に敗北する象徴のようにも
マリアには思えるのです。
でもヴァルは言ったはず。
あなたほどの女優が、なぜ若さの特権にしがみつくの?