ジュリエット・ビノシュ

LGBTシネマ365日別冊 1日3分「ゲイ映画のキメ台詞」

(パッヘルベルのカノン)

〜深読みアクトレス㉛〜

(パッヘルベルのカノン) ラスト、マリアは舞台の位置に向かいます。セリフはなく「パッヘルベルの3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ」が静かに流れる。マリアはシャネルの黒いスーツに白いブラウス、 マニッシュに脚を組み、自信に溢れ一点を見つめる。愛とは姿を変え、別のものに生まれ変わり、時を超え、生き...
LGBTシネマ365日別冊 1日3分「ゲイ映画のキメ台詞」

主人公は時を超越しています

〜深読みアクトレス㉚〜

主人公は時を超越しています 「昔のわたしをイメージしたのでしょうけど、わたしは変わったわ。  もっと若い人想像したのでは」とマリア。ピアースはマリアの指摘を予期していたように「彼女に年齢はありません。またあらゆる年齢でもあるのです」マリアはまだ自信がない。「ジョアンは才能もあり現代的よ。主人公と同じ」「主人公...
LGBTシネマ365日別冊 1日3分「ゲイ映画のキメ台詞」

あなたをイメージして書いた

〜深読みアクトレス㉙〜

あなたをイメージして書いた マリアの楽屋に、25歳の脚本家であり監督であるピアース・ロールドソンが訪ねてきます。主演の打診でした。送られてきた脚本をマリアは読んでいましたが返事はまだでした。「脚本を読んだわ。わたしよりむしろジョアンに適役かと思う」若者は静かな声で「僕はあなたをイメージして書いたのです」&nb...
LGBTシネマ365日別冊 1日3分「ゲイ映画のキメ台詞」

彼は成熟と無縁だった

〜深読みアクトレス㉘〜

彼は成熟と無縁だった 原作者ヴィルヘルムが残した「マローヤの蛇」の続編の一部を奥さんが見せてくれた、と演出のクラウスがマリアに教えます。「新たな解釈となる場面もある。彼は成熟とは無縁だった。むしろ晩年の作品はより大胆で不思議な力に満ちていた、マリア、彼のように見方を変えるべきだ。凍てついた過去でなく、未来の光...
LGBTシネマ365日別冊 1日3分「ゲイ映画のキメ台詞」

どうでも…

〜深読みアクトレス㉗〜

どうでも… ヴァルの指摘は新しいヘレナ像の突破口でした。マリアはハッとする。「なぜこの作品の意味は逆にも取れると思うの?」おとなしく訊く。「この脚本は物体のようなものよ。立場によって見方が変わる」「どうかしら」マリアはわざと気のない返事。「蛇を見なくちゃ」ヴァルは滅多に見ることができない「マローヤの蛇」を見た...
LGBTシネマ365日別冊 1日3分「ゲイ映画のキメ台詞」

ヘレナの死を一晩考えてた

〜深読みアクトレス㉖〜

ヘレナの死を一晩考えてた 翌朝、マローヤの蛇を見られる絶好の天候になりそうだった。マリアとヴァルは早朝から家を出る。山道を歩きながら「ヘレナの死を一晩考えていた」とヴァル。「死んだとは書いてないのよ。姿を消すだけ」「あなたの解釈ね」とマリア。「ハイキングに行き戻らない。答えはひとつ、ヘレナは別の場所で再出発し...
LGBTシネマ365日別冊 1日3分「ゲイ映画のキメ台詞」

タバコはあぶない、渡して

〜深読みアクトレス㉕〜

タバコはあぶない、渡して ジョアンがマリアを表敬訪問します。あなたを尊敬しているとベタ誉めする。ジョアンと別れた帰り「いい子じゃない」マリアは機嫌がいい。「お世辞をいいまくられて好きになったのね」とヴァル。「ちがうわよ」とマリア。「そうよ、ちがうわよね」とヴァルは穏やかに応じる。家に帰ってもマリアの上機嫌は続...
LGBTシネマ365日別冊 1日3分「ゲイ映画のキメ台詞」

答えて

〜深読みアクトレス㉔〜

答えて ヴァルは再びマリアに訊きます。有無をいわさぬ口調です。「答えて。わたしの解釈はあなたを混乱させるだけ?それが悔しいし、気まずく、いづらいの」本気の答えでないともうヴァルは納得しない。そうマリアは思った。「残って」とマリア。「無理よ」とヴァル。「残って。あなたが必要よ」マリアはヴァルを抱きしめる。さっさ...
LGBTシネマ365日別冊 1日3分「ゲイ映画のキメ台詞」

マリア、無垢な心を取り戻せば?

〜深読みアクトレス㉓〜

マリア、無垢な心を取り戻せば? 無垢な心を取り戻せば女ふたりの関係がわかる、ヴァルはそういっているのですが「今さら無垢になれない」「なれるわ、マリア、ヘレナを受け入れればいいのよ」マリアが嫌うヘレナを、ヴァルは終始一貫擁護します。「当然強さは弱さより好ましい。若さは成熟より美しく、冷酷さはクール、苦しみは醜い...
LGBTシネマ365日別冊 1日3分「ゲイ映画のキメ台詞」

いいえ、ちがう

〜深読みアクトレス㉒〜

いいえ、ちがう 「女二人の関係が、わたしにはどうも…」つかみきれない。マリアの苦悩は深まります。とうとう「この作品は男の幻想よ」と作品のせいにする。「いいえ、ちがう」ヴァルはきっぱりと否定します。「シグレットのときもそう思った?」と訊く。思わなかった。シグレットは若くて勝者でヘレナのような負け犬ではないから。...