お前だ、ゆるいバカ女

 

お前だ、ゆるいバカ女

 

車を停めてキャシーはハンドルに額を当てていた。

後ろから激しくクラクションが鳴り、隣に停まった車から

男が罵声を浴びせた。

「交差点だぞ。免許あんのか、お前だ。ゆるいバカ女」

キャシーは黙ったまま男を見つめる。

「なんだ、文句あんのか」

長いレンチを掴んだ。「何ですって?」

返事も待たずテールランプを砕き、

前に回ってフロントガラスを2度、3度強打する。

クモの巣のようにヒビ割れた。

男は急発進で走り去った。

キャシーは車道に立ったまま見ている。

本作冒頭の朝の光景と同じ。

ただ立っているキャシーに何がある。

怒りか、孤独か、むなしさか、名状しがたいが、絵になる。

 

 

 

 

 

 

〜「プロミッシング・ヤング・ウーマン」〜

 

 

bn_charm