稀な事情で退学しました
ウォーカー学部長室。
「もう一度大学に戻りたいとか?」
ウォーカー学部長がキャスに訊く。
「稀な事情で退学しました。ニーナ・フィッシャー事件、
お忘れですか? アル・モンローは覚えています?」
「もちろん。帰国してうちの大学で講演してくれたわ。
頭がキレるし、いい人ね」
とは言うものの、学部長はどこか不安そうだ。
「彼への告発は、覚えています?」キャスは微笑を浮かべる。
「いいえ」。突っぱねるような返答。
ニーナとは、ある種の関係者にはタブーなのだ。
何を蒸し返す気か。学部長は不快感をあらわにする。
〜「プロミッシング・ヤング・ウーマン」〜