あなたの手を見ていた…
寒々とした港を見下ろすホテルのベランダ。
アルマは全裸で壁にもたれキャロルに語りかける。
「初めて会った夜、顔にキスしたかった。
彼が誘ったでしょ。私の友だちはみな誘うのよ。
あの奇抜さと、おもちゃの電気機関車と、冷たい仕草で。
私もうまかったでしょ。“私の秘密の部屋を見せるわ”なんて。
考えていたの。来るわけがないと。
でもあなたは来てくれた。
彼が私に“彼女、美人だな”
あなたは答えたわ。“そうよ”」
キャロルが黒いロングコートでアルマを包む。
「あなたの手を見ていた。抱いて欲しいとすぐ思ったわ。
あなたを望んだのは、私を不安にさせたのが素敵だったから」
このシーン、後に来るベッドシーンと双璧をなして映像が美しい。
ジャック・ドワイヨン脚本の詩的なセリフ、
ブリュノ・ニュイッテンの撮影が卓抜。
ブルノ・ニュイッテンはアンドレ・テシネ、マルグリッド・デュラス、
ジャン=リュック・ゴダールらが最大の信頼を置く撮影監督です。
〜「ラ・ピラート」〜