これが私?
出来上がった自分の肖像画をエロイーズが見る。
「これが私?」感情のない声で訊く。
「こう見えます?」
「誰の目にも」
「どういう意味?」エロイーズが聞き返す。
「規律、しきたり、観念が支配しています」
「それだけ? 私自身は?」
「つかのま現れてまた消えます」
「消えないものや深い感情もあります。この絵は私に似ていません」
バッサリ。そればかりか
「あなた自身でもない」全面否定です。
「絵の何をご存知? 心外です」
ムッとしたマリアンヌを捨て置いて「母を呼びます」
お嬢さま、さっさと出て行く。
〜「燃ゆる女の肖像」〜