あなたにとっても辛い過去だ
家族の中で浮いた存在になったアントワーヌはセラピーに通っている。
セラピストは「お父さまと話す時間は?」
「父にとっては辛い過去なので」とアントワーヌ。
父と息子の間に少なくとも母親の話題で会話がないことを
セラピストは感じる。
「あなたにとっても辛い過去です」
話し合うことが肩の荷を降ろすことになると
セラピストは暗示するが、そんな簡単なことじゃない。
癒されない傷が40歳の今まで重苦しくのしかかっていた。
結婚生活も破綻し、仕事も順調とは言えない。
セラピストは話し合えというが、誰も話したがらないのだ。
〜「ミモザの島に消えた母」〜