ゴア通路の驚くべき事実
離婚することになったアントワーヌが荷物をダンボールに入れている。
「ゴア通路の驚くべき事実」という古ぼけた書物があった。
「この本で学んでね。ママより」と書き込みがある。
本を手にした娘のマルゴが
「パパのお母さんって溺死した人?」
パパの表情が変わり「本を返して。返すんだ、今すぐ!」
そばにいた妹のアガットがわからないように溜息を漏らす。
兄が10歳、アガットが5歳の時死んだ母のことになると
兄は人が変わる。
ゴア通路とはノアールムーティエ島、通称「ミモザの島」の
島と本土の間に1日2回、干潮の時だけ現れる4.5キロの細長い道だ。
そこで母は30年前に溺死した。
父は再婚し、妹は継母となったアンヌ・ソフィーを実の母として
慕っているが、アントワーヌは記憶の底にいる母を忘れられない。
母の死について問うたび、話を打ち切る父と祖母。
何があった。アントワーヌは30年間、疑惑に閉じ込められている。
〜「ミモザの島に消えた母」〜